コラム
【第29回フィーチャーストーリー 小野恵太プロ】~劣勢をチャンスに変えるために必要なこと~

■海外の試合を通して掴んだ新しいスタイル
安定感に定評のあるプロであっても試合ごとに課題があり、解決方法を模索しながら戦っているもの。現在、小野プロが意識して取り組んでいることはあるのでしょうか?
「以前よりもルーティーンに意識を向けないように心掛けています。最近は細かな部分に気が向き過ぎて、勢いが消えているとずっと感じていたんです。解決策に悩んでいたところ、先日出場したソフトダーツ世界選手権THE WORLDでの経験がヒントになり、スタイルの見直しに繋がりました。その大会では実力者が集まっているブロックでの戦いを強いられたため、かなり厳しい試合が予測されたんです。そこで些細なことは考えずに『思い切って投げよう』と思いました。その結果想像していたよりも良いパフォーマンスを発揮することができたので、JAPANでも同様のスタイルで戦っていこうと考えたんです。もちろんルーティーンを意識しないことは良い影響だけでなく、悪影響もあります。そこはこれから取り組まなければならない課題ですね」
■場面に応じたプレイを目指して
ルーティーンに気持ちを向けないことで勢いを取り戻した小野プロ。スタイルを変えたことで、悩んでいる点についても聞きました。
「01でのあがりの一投など慎重になる場面での切り替えが難しくなります。STAGE 9の決勝戦で荏隈秀一プロと戦った時は、特にマイナスの影響が顕著に現れてしまいました。32を残して迎えた有利なラウンドで3投を使い上がることができず、ファーストレグを落としてしまったんです。今振り返ると勢いにまかせて数字を削ったことで『この流れで攻め切ろう』と考えていたと思います。しかし最初の一投が16のシングルに入り、理想では一度落ち着いてルーティーンを見直しながら丁寧に投げるべきでしたが、勝ち急いだことでミスにつながってしまいました。これからは、自分が置かれているシーンに合わせたプレイができるようになりたいですね」
■感覚派ならではのフォームとは
グリップやテイクバックを工夫するなど、トッププレイヤーは日々の練習からフィットするフォームを探し続けているもの。そこで小野プロにフォームのこだわりについて語っていただきました。
「基本的にスローラインの左端から投げていてほとんど立ち位置を変えることはありません。スタンスは前足をラインに対して平行に置くクローズドスタンスで、ここからの腕の構え方がまわりのプレイヤーとは少し違うと思っています。僕はまず先にボードを見るんです。狙うポイントを定めてから投げる方の右手を動かし始め、視界をすっぽり隠すように構えます。つまりスローの際はボードがまったく見えていません。かなり感覚に頼ったフォームだと思いますね。グリップは親指、人差し指、中指の3指でやや深めに握っていてテイクバックはそれほど意識せずに、ダーツを”放る”イメージを持ちスローしています。ちなみに海外で試合をしていると、日本人の方が外国のプロよりもフォームがきれいだと感じますね。海外のプレイヤーは自分にしっくりくる投げ方であれば、ある程度は基本から崩れていても気にしないのだと思います」
いよいよ後半戦に突入するJAPAN2019年度ツアー。最後に小野プロにこれからの目標を聞きました。
「冷静に相手を観察する力を身に付けて、劣勢に強くなりたいです。僕は相手がとても調子が良く自分が不利な立場にある時は、できるだけ『仕方がない』と考えるようにしています。地道に待っていれば、硬くなったり緊張したりと安定感が欠ける場面は必ずありますからね。今はそこを見逃すことが多いので、これからはその一瞬をチャンスに変えていきたいです」
インタビューを通して、冷静に自身の状態を分析しながら丁寧にダーツに取り組んでいることが印象的だった小野プロ。今シーズンの目標として「年間ポイントランキングで5位以内に入りたい」と語って下さいました。いよいよ終盤を迎えるJAPAN。歓声が響く試合の中心には、きっと小野プロの姿があることでしょう。
▼選手名鑑(小野恵太プロ)
https://livescore.japanprodarts.jp/directory_detail.php?p=2897